東京大学史料編纂所

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愛知県西尾市立図書館岩瀬文庫出張報告

 昭和四十一年十月十九日より二十三日まで愛知県西尾市立図書館岩瀬文庫に出張し、同文庫所蔵の御役人代々記、御役人万年鑑、江戸町奉行及配下人名録、江戸町年寄系譜、寛知集、及び脇坂家年譜を調査した。そして、その中の寛知集二十五冊を写真撮影した。
 (1)御役人代々記 写本十三冊、縦十三糎、横十九糎、袋綴。表題は「代々記 壱」の如く記し、第十三冊目は、「代々記  附録 十三止」と記されている。内題は「御役人代々記巻之一」の如く記して巻之十に至る。但し、巻之二は「二ノ上」「二ノ中」「二ノ下」に分冊し、巻之十は第十二冊に入れ、次の冊は内題はなく、大番組頭一番組より十二番組までを記してある。第一冊(巻之一で、老中より高家までを記す)の奥に「明和三丙戌改増補  小野氏□(朱印)」とあり、第二冊(巻之二ノ上で、武家執役より光現院用人までを記す)の奥に「明和四丁亥五月改書  小野氏□(朱印)」とあり、第八冊(巻之六で、目付と使番を記す)の奥に「明和三丙戌増補  小野氏□(朱印)」とあり、また第十一冊(巻之九で、西丸裏門番頭より浄岸院用人までを記す)の奥に「明和三丙戌改増補  小野氏□(朱印)」とある。内容は、江戸幕府の役人老中より西国郡代までと、附録として大番組頭との任免次第を分類記載したもので、年代は幕初より寛政年間に及んでいる。奥書に見える如く、明和三年及び同四年に小野氏(伝未詳)の改増補したものであるが、更にその後書継がれたものである。この種のものには、万年録、御役人代々記、柳営補任などと題するものが存するが、それぞれ出入があるから、本書も参照すべき一本である。本文庫所蔵本は一切貸出しをしないから、次の機会に写真撮影することが望ましい。
 (2)御役人万年鑑 写本一冊、縦二十・六糎、横十六・三糎、袋綴。表題に「御役人万年録  全」とあり、表紙右側上方に、黒印「典故」、同下方に、黒印「昌平坂」を捺してある。小口書には、横に「御役人万年録  全」とあり、巻頭に「天正以来年鑑」と題し、天正 癸酉より元文 丙辰までの年号一覧表をかかげ、次に「布衣以上御役人万年録上巻目録」と題し、老中より目付までの記載目録を記してある。内容は、老中より目付までの任免次第を記したもので、年代は天正元年より元文元年に及んでいる。蔵書印により、昌平坂学問所の旧蔵本であることがわかるが、上巻のみであるのは惜しい。
 (3)江戸町奉行及配下人名録 写本一冊、縦二十七糎、横十九・一糎、袋綴。表題はない。内容は江戸町奉行の由緒を記したもので、町奉行組由緒与力知行所同心御切米并御取立之覚、地方知行被下候由緒御尋ニ付元禄四年未四月書上候写、古来之御切米手形之文言、先祖由緒書、町地割役相勤候由緒之覚など、元禄・延宝・享保年間の覚書・書上の写を収めてある。
 (4)江戸町年寄系譜 写本一冊、縦二十三・五糎、横十六糎、袋綴。表題は「江戸町寄系譜」とあり、内題はない。内容は江戸町年寄の樽・館両家の家譜を抄録したもので、過去帳の抜抄もあって、記事は簡単であるが、元和より大正年間に及んでいる。
 (5)寛知集 写本二十五冊、縦二十六・七糎、横十八・七糎、袋綴。各冊の表紙見返しに、鹿島清兵衛の蔵書印(印文「子孫永保 雲煙家蔵書記」)が捺してある。第一冊は全体の目録で、表題に「寛印集 目録  」とあり、巻第一より巻第廿四までの目録を記してある。第二冊めからは、表題は「寛知集  一  」の如くに記し、巻頭に「寛文印知集巻第一目録」の如くに題して記載目録をかかげ、次に本文を記してある。文字は明確で筋のよい写本と認められる。続々群書類従第九地理部に収めてある寛文印知集は、「黒川氏蔵本により校訂せり」とあるが、黒川氏本は所在不明のため、誤脱と思われる箇所があっても参照不可能であるから、この岩瀬文庫蔵本は、内閣文庫所蔵本と共に重視すべき一本と思われる。前記の通り写真撮影した。
 (6)脇坂家年譜 写本一冊、縦二十三・九糎、横十六・六糎、袋綴。表題も内題もなく、内容は脇坂家譜の抄録で特に見るべき記事はない。
 (片山 勝)


『東京大学史料編纂所報』第2号p.53